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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁
あと、歩いてゆく。
鬼怒川温泉境がひらけ、また配給制からも、近年は変ったろうが、「日光山志」などには“栗山郷南北七里、曲物の器など造り、一年の貯穀なければ、橡ノ実、栗などを補食とし、岩茸を採り、鳥獣を猟る――”などと書かれてある。
今でも、ひどいことはひどい。都心に幾つもの大ビルディングが聳えるあいだに、この辺の部落に一燭光が増しているとも思えない。
この峡谷から奥日光へかけて、平家の落人が住んだという伝えがあり、それで来たわけだが、この目的は徒労だった。部落で唯一の青柳荘という、しもたやみたいな旅舎に休み、口碑伝説はいろいろ聞いたが、野史にむすびつく程度の根拠もない。
それより、ここの御亭主のT氏が上海からの引揚者で、高島菊次郎翁の子息とも、嘉治さんの知人などともよく知っているところから、話はべつな方に咲いてしまった。戦時ジャーナリストらしい海外話題が尽きないのである。だが、ふと妙な気がしないわけにはゆかなかった。どんな無恥な政治家でも、ここでは文化の文の字もいえた義理ではない山の中だし、日光山志や平家伝説なども頭にあるせいかもしれない。はからずも一軒家のあるじから、シャンハイ、ソヴィエト、ハノイなんて語を聞くと、何かあたりが見まわされる。