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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁
あなたと違って、ぼくは歴史家ではないのだし」
やがて会下山を降りながらも、ぼくらは尽きない話に興じていた。健吉さんは始終、矢立の筆を舐めつつ四望を写生しぬいていた。
待っている車に乗り「これから鵯越えまで行こうじゃありませんか」とぼくがいい出すと、いささか意外そうに「行きますか」と春海さんが危ぶむ。「え。行きますが、どこか途中で、お茶でも飲みませんか」「あ。分かりました」と、春海さんうなずく。
車は市街の中心へ出て、さっそく手ごろな喫茶店を探しあるく。いい出しはぼくだが、つまりは諸兄に喫茶の憩いをすすめたのではなく、ぼく自身が腹鳴りの始末をするため、適当な寄港地へ碇泊を緊急に求めているのだった。それもこの道中、一回や二回ではなかったので、なんともそのたび道づれの諸兄には気がひけてならなかった。
長田茶苑というのへ飛びこむ。諸兄は一隅で是非なき顔つきのお茶。ぼくはさっそく用達し。尾籠なはなしだが、そこのトイレットとは窓一重のすぐ隣がよく繁昌しているパチンコ屋であった。あの旺んなザラザラ、ガチャンの金属音と、客呼びのメガホーンや電蓄の喚きなど、神戸中の騒音をカン詰にして爆発しつづけているような音響である。