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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁
それはそれ以前の、奥州の安倍貞任を捕虜として殿上人が庭へすえたとき、梅の花を示して「これはなんという花か知っているか」とたずね、かえって貞任から「わが国の梅の花とは思えども――」と、あべこべに大宮人が揶揄されたという、あの挿話などに見られる観念が、木曾入洛のばあいにも、公卿眼の先入主になっていたようである。
だが「牛車の乗り間違え」みたいな話は、事実、ずいぶんあったことらしい。古今著聞集か何かにも、木曾方の一将が、いちど牛車に乗ってみたいと考え、都大路を打渡して得意になっていたが、牛が物に驚いて暴れ出し、止めどもなく駈け出したので、さすが武骨もころげ回り、往来人にはよい笑い草になってコリコリしたというような随筆も見える。
いずれにせよ木曾の野性が、上洛してやったことは、日本の旧軍部がかつて上海や南京でやったことと、似たものではあるまいか。いや義仲のばあいは、あれ程ではない、もっと稚気があり天真爛漫だったというなら、それは時代だけの違いである。戦時中よく新喜楽やとんぼの床の間に大きく構えたカーキ色の将軍が文化人を召し集めて高説を垂れていたことなどあったが、その姿に“上洛の木曾義仲”を自分はいつも連想していた。