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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁
山上でいま、湯を掘っていた。湯が出ないうちにもう佐佐木信綱博士から“梛の湯”と名づけられたと宮司がいう。宝物類なども展示されたが、ここも古く火災にあっているので多くは伝写である。中に、政子が髪の毛で綴ったという梵字曼陀羅などあったが、これも足利期らしく思われた。
しかし、政子がここに数ヵ月を潜み、愛人頼朝の旗挙げ以後の消息を、朝夕、海ばら越しに案じていた様など想いあわせると、なかなか詩情に富む所である。政子という女性は、歴史面や女性問題の上からも、もっと書かれていい題材ではなかろうか。平安朝以後から鎌倉期にかけての、新しい型の女性は、政子像によって、初めて個性的につよく打ち出されたといってよい。
伊豆御山六百階を散りざくら
夜ざくらや政子曼陀羅昼に見て
およそ行楽地といえば、この日本名物が散らかっていない山川はない。古人は、人界を超えた高地を形容して“塵表”などといったが、ビキニの灰でそんな観念の救いさえ完全にふきとんでしまった。それにくらべると、人間の足や車で行ける程度の所を紙クズだらけにしているなどの方が、まだまだ、罪の浅い神の子の遊びなのかもしれない。