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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《あさひの鎧(あさひのよろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 頁

青空文庫

しかし小次郎は扉のあかないことも、そうして誰もが答えないことも、覚悟の前だといったように、いや誰かに答えさせてやる、きっと扉はひらいてみせると、そう決心しているかのように、いつまでもいつまでも執念ぶかく、叫び、呼び、喚きながら、躰をうちつけうちつけした。

活躰解剖の手術の部屋の、手術台の上に浮藻の体は、一人しずかに置かれてあった。

浮藻も小次郎と同じように、漢権守の人物と、その恐ろしい居城とについては、ずっと以前から、聞かされていた。

そうして卯ノ丸に導かれて、この城へはいって来て、小次郎とひき放され、一つの部屋に住居させられ、寝起きの世話や食べ物の世話などを、とりしきってやってくれる老婆から、ここが漢権守の居城であることを、言葉少なに説明された時、もう自分の運命の、窮まったことを覚悟した。

(泣いても喚いても遁がれることは出来ない)

でも彼女はこんな境遇にいても、自分のことよりは小次郎のことが、しきりに気づかわれてならなかった。

(生きているか、殺されたか、どこに住んでいるか、病んではいないか?)と。――

で、彼女は老婆に訊ねた。

「あのお方はおたっしゃでございます」