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あらくれ

あらくれ

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《あらくれ》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 119,451 字 · 236 頁

青空文庫

そしてやっぱり自分一人のことに思い耽っていた。時々胸からせぐりあげて来る涙を、強いて圧つけようとしたが、どん底から衝動げて来るような悲痛な念が、留どもなく波だって来て為方がなかった。どこへ廻っても、誤り虐げられて来たような自分が、可憐くて情なかった。

小野田がのそりと入って来たときも、静に針を動かしている女の傍に、お島は坐っていた。どんよりした目には、こびり着いたような涙がまだたまっていた。

「何だ、そんな顔をして。だから己が言うじゃないか、どんな商売だって、一年や二年で物になる気遣はないんだから、家のことはかまわないで、お前はお前で働けばいいと」

小野田はそこへ胡坐をくむと、袂から莨を出してふかしはじめた。

「被服の下請なんか、割があわないからもう断然止めだ。そして明朝から註文取におあるきなさい」

お島は「ふむ」と鼻であしらっていたが、女の註文取という小野田の思いつきに、心が動かずにはいなかった。

「そしてお前には外で活動してもらって、己は内をやる。そうしたら或は成立って行くかも知れない」

「こんな身装で、外へなんか出られるもんか」お島ははねつけていたが、誰もしたことのないその仕事が、何よりも先ず自分には愉快そうに思えた。