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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《あらくれ》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 119,451 字 · 236 頁
「良人はあんなだし、私でもいなかった日には、一日だって店が立行きませんよ」
「今度あばれちゃ駄目よ」姉は出てゆくお島を送出しながら言った。
「どうもお騒がせして相済みません」お島は何のこともなかったような顔をして、外へ出たが、鶴さんがまだ植源にいるような気がして、素直に家へ帰る気にはなれなかった。
外はすっかり暮れてしまって、茶の木畑や山茶花などの木立の多い、その界隈は閑寂していた。お島の足は惹寄せられるように、植源の方へ歩いていった。「鶴さんも可哀そうよ」そう言ってお島を窘めたおゆうの目顔が、まだ目についていた。北海道の女よりも、稚馴染のおゆうの方に、暗い多くの疑がかかっていた。
大きな石の門のうえに、植源と出ている軒燈の下に突立って、やがてお島は家の方の気勢に神経を澄したが、石を敷つめた門のうちの両側に、枝を差交した木陰から見える玄関には、灯影一つ洩れていなかった。お島はと欅の木とで、二重になっている外囲の周を、其方こっち廻ってみたが、何のこともなかった。
車で家へ帰ったのは、大分おそかった。
「お帰んなさい」
店のもの二三人に声をかけられながら、車から降りると、奥の方の帳場に坐っている鶴さんの顔が、ちらと見えたので、お島は漸と胸一杯に安心と歓喜との溢れて来るのを感じたが、矢張声をかける気になれなかった。