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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
線上閱讀中村 清太郎《ある偃松の独白(あるはいまつのどくはく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 頁
かつて覚えのない、さびしさだった。
宝剣岳の挿図
――彼こそ俺の知己……それも新らしい、そして最大の知己ではなかったか。そんな考えが、つづいて俺の胸にひらめいた。俺はまだ彼と語りあいたい事が、山ほどあった、という気がしきりとつのって、何か美しい夢を、半途で見はぐったような悔いに責められた。彼が俺を解し得たほどに、俺は未だ彼を解し得たとは思われぬ。残念だが、そこは能力のちがいで、是非もない。それにしても、さだめし彼には、貴い経験や人に知れない辛苦も、数々あることだろうに……。さっきの画家の背ろ姿が、まざまざと眼によみがえる。それが又、たまらくなく淋しげに見えるのだ。何だかそれは、――彼も人間界では、ここにいるほど、仕合わせではない、と打ち明けてでもいるかのように。(――しまった、俺は……)、しかしその時、
「何と思っても、お前は彼の後を追うわけには行くまい。だが今ではお前は、彼の画の中と言わず、彼の温かい血のめぐる胸の奥に、大事にかけて、生かされているはずではないか。その上、よしや遠く雲をへだてようとも、きっとお前は、彼と語り合うことができるのだぞ!」