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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
線上閱讀中村 清太郎《ある偃松の独白(あるはいまつのどくはく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 頁
槍※岳初夏(西岳より)
清見ヶ原の挿図
ここから白檜の間を、笹と灌木をふみわけて、下り加減に南へたどると、次々に大小の池があらわれる。左手の左俣へ、こぼれそうにたたえた釜なりのもあれば、なだらかな丘に抱かれ、岳樺の傘をかざした、隠り沼といった趣きのもあり、樹の茂った高い崖の根に蒼暗く、古城趾の濠を思わすのもあって、小バイケイ草の多い、美しい草地の波を越えると、ここらで最大の明るい池畔に出る。双六ノ池の半分よりは大きかろう。ゆったりした草尾根や丘に囲まれ、尾根に沿うて南北にやや長く、北に小沼をひかえて、白檜や岳樺の疎林はあるが、広く大空に水面をさらしている。上から望んで、原の中心をなしていた、あの池であろうとうなずかれた。
槍ヶ岳と穂影ノ池の挿図
南の池尻に近い高みにある白檜の疎林、その樹齢数百年――と義蔵さんが鑑定した――の古幹の間に、天幕をはって、私は十日余り、単身画作に暮らした、一日おきくらいに、双六から連絡してもらって。南には池つづきの美しい原が小広い。この辺が、まずこの原の中心部であろう。ここまで峯から一時間半ほどかかったが、後に、も少し北よりから小尾根に出て、そこから逆に南よりの林をぬけて、直接ここへ出る近道を見つけた。