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しゅんきんしょう

ちくま日本文学014 谷崎潤一郎

谷崎 潤一郎

線上閱讀谷崎 潤一郎《ちくま日本文学014 谷崎潤一郎(しゅんきんしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 85,196 字 · 169 頁

青空文庫

最初の彼の予想では、「昆布」は珍しい姓であるからじきに分ることと思っていたのだが、窪垣内と云う字へ行って見ると、そこには「昆布」の姓が非常に多いので、目的の家を捜し出すのになかなか埒が明かなかった。仕方がなく車夫と二人で昆布姓の家を一軒々々尋ねたけれども、「昆布助左衛門」を名乗る者は、昔は知らず、今は一人もいないと云う。ようようのことで、「それならあそこかも知れない」と、とある駄菓子屋の奥から出て来た古老らしい人が縁先に立って指さしてくれたのは、街道の左側の、小高い段の上に見える一と棟の草屋根であった。津村は車夫を菓子屋の店先に待たして置いて、往来からだらだらと半町ばかり引っ込んだ爪先上りの丘の路を、その草屋根の方へ登って行った。めっきりと冷える朝ではあったが、そこはうしろになだらかな斜面を持った山を繞らした、風のあたらない、なごやかな日だまりになった一廓で三四軒の家がいずれも紙をすいていた。坂を登って行く津村は、それらの丘の上の家々から若い女たちがちょっと仕事の手を休めて、この辺に見馴れない都会風の青年紳士が上って来るのを、珍しそうに見おろしているのに気づいた。