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パンドラのはこ
パンドラの匣
線上閱讀太宰 治《パンドラの匣(パンドラのはこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,644 字 · 386 頁
ただ、役者の台詞が、ほとんど昭和の会話の調子なので、残念に思った。脚色家の不注意かも知れない。俳優は、うまい。どんな端役でも、ちゃんと落ちついてやっている。チイムワアクがとれている。いい劇団だと思った。こんな劇団にはいる事が出来たら、何も言う事はないと思った。幕合に廊下を歩いていたら、廊下の曲り角に小さい箱が置かれてあって、その箱に、「今夜の御感想をお聞かせ下さい」と白ペンキで書かれてあるのを見て、ふいとインスピレエション。
箱に添えられてある便箋に、「団員志望者であります。手続きを教えて下さい。」と書いて住所と名前をしたため、箱に投入した。なんと佳い思いつきであろう。これもまた奇蹟だ。こんないい方法があるとは、この箱の文字を読む直前まで気がつかなかった。一瞬にして、ひらめいたのだ。神の恩寵だ。けれども、これは、兄さんには黙っていた。笑われるといやだから、というよりは、なんだかもうこれからは、兄さんにあまり頼らず、すべて僕の直感で、独往邁進したくなっていたのだ。
六月四日。火曜日。
晴れ。わすれていた時に、春秋座から手紙が来た。幸福の便りというものは、待っている時には、決して来ないものだ。