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うえすぎけんしん
上杉謙信
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《上杉謙信(うえすぎけんしん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,102 字 · 256 頁
坑の中から主人に答えているのである。
鬼小島弥太郎も、共に屈みこんで、側から径二尺ばかりな坑を覗きこんでいた。権六の手はその足もとへ、鶏のように土を掻き出している。
――と、うしろの木の間を、かさこそと、静かに歩いて来る人があった。櫨の紅い葉が、その人の肩に舞った。
「弥太郎。何しておるか」
声に驚いて、ふたりは振向いた。坑から首を擡げた権六の如きは、泥になったその顔と両手を持ったまま、悪い事でもしていたように、びっくりした様子で後へ飛び退くなり平伏してしまう。
「お、これは、わが君でござりましたか」と、弥太郎も多少まごつき顔に――「徒然の余り自然薯を掘っておりました。これなる若党が、薯掘りの上手なりと、自慢いたしますし、また大いに英気を養わんとぞんじまして」
謙信は苦笑した。本陣のすぐ下の崖ではあるが、近侍もつれず唯ひとりだった。歩み寄って、薯の坑をのぞきながら、
「なるほど、自然薯か。さても根気よく掘りおったな。さあ、掘れ掘れ、遠慮すな」
と、促して、
「――有難や、地下にもなお、この天禄があるか。地上の物は、ここ数旬の滞陣に、あけび、胡桃、榎の実、山葡萄、食える物は零余子にいたるまで喰べ尽したかに見らるるが、……弥太郎、まだまだあるなあ」