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うえすぎけんしん

上杉謙信

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《上杉謙信(うえすぎけんしん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,102 字 · 256 頁

青空文庫

そこでわれら如き喰いつぶしを、いつまで、甲府の牢に留めおかれたところで、何の意味もござるまい。というて、馘らんか、越後表にも、甲府の隠密や信玄公が一類の者、何十人か捕え置いてあれば、いつでもその者共の首を斬って、お酬い申すことができる。――そこはさすがに御賢慮に抜かりのない殿、昨日われらの縄目を解いて、一書を授け、且ついわるるには。――お身らを解いて国許へ帰しつかわす故、春日山に囚えておる甲州の家人共をも、無事に解いて放されい。と、つまり敵人と味方との生命の引換えを申し出られた。――われらもとよりさして欲しい生命でもござらぬが、折角、助けるというものを、無碍に断って捨去るのもいかがと思い、のそのそと戦も果てた今頃を、これから越後へ帰る途中でござる」

「いや、それで様子がよく分った。まずは、無事御帰国で、目出度いと申しあげる」

「其許も、川中島に一戦を遂げ、且つは、久しぶりに、おむすめ御も連れ戻られ、この上の祝着はござるまい」

「お察しのとおりでござる。むすめに代って、黒川大隅どのには、とりわけお礼を申しあげる」

互いに礼を施して、甲府へもどる者と、越後へ帰る一行とは、東西に道を交わし合った。