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うえすぎけんしん

上杉謙信

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《上杉謙信(うえすぎけんしん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,102 字 · 256 頁

青空文庫

聞えない振りしておれ。そのうちに行ってしまおう」

中では、それも一興にして、返辞もせず、炉の火燗を、出したり入れたりしていたが、外の弥太郎は、帰ればこそである。

「おおウい。凍えてしまう。開けてくれい。――やいっ、開けないか。知らん振りをしていてもだめだぞ。弥太郎の鼻だ。前を通ったらぷーんと薫って来たではないか。この雪道、どうして素通りできる。……意地悪をするなよ。こらっ。こらッ」

家の中で、くすくすと、笑い声がしている。弥太郎はいよいよ烈しく叩いて、

「ばかだなあ、貴様たちは。せっかくおれが、酒のさかなにと、よい土産をさげて来たのにこれを無駄にするのか――折角のこれを」

ほんとらしくいったので、その土産のさかなに釣りこまれたのか、根まけしたのか、とうとう中の者も、そこを開けて弥太郎を車座に迎えてしまった。

弥太郎は痛飲した。手ぶらで来て、そこの五人分も飲んで、炉のそばへ、横になると、やがて高鼾である。

「怪しからんやつだ」

と、彼のために、甚だしく淋れた座を見まわして、一人がぼやいた。

「癖になる」

目交ぜして、頷きあうと、無理に弥太郎をゆり起した。そして、武士が虚言を吐くとは怪しからんと責めた。