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せかいかいきじつわ「じょぶん」
世界怪奇実話
牧 逸馬
線上閱讀牧 逸馬《世界怪奇実話(せかいかいきじつわ「じょぶん」)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 251,305 字 · 498 頁
擦ったのだ。急いで手を引く拍子だったので、案外強い力だったのだろう。指輪が、激しく車体に触って、黒塗料の表面をちょっと削り除った。車扉に瑕が付いたのだ。と、下から、青い色が覗いて見える。青い痕――指輪が表被を削り取った下は、地が青いのである。
青――も、只の青ではない。青灰色――駒鳥の卵の色という特種の混合色なのだ。
少女ドロシイの暴行虐殺犯人は、駒鳥の卵の色のダッジのセダンに乗っていた。
ホテリングは、この小さな出来事に気が付かない。静かにガレイジの戸口に立って、外を見ている。三人の刑事の眼に、一時に異様な緊張が来た。凡ゆる不可能は、場合に依っては可能である。真逆、と思う、そのまさかを決して除外出来ない事は、経験が彼等に教える所だ。青灰色のダッジ――斯うなると、この尊敬す可き長老と雖も、最少し叩いてみなければならない。
咄嗟に、無言の相談が纒って、
「鳥渡伺いますが、先週の木曜日に、フリント市へ行きましたか」
ペイルソルプが、逸る声を抑さえて、ホテリングの背中へ訊いた。
相手はゆっくり振り返って、
「はい、参りました。仕事を探しに行ったのです」
何らの感情を示さずに、ホテリングはそう首肯いたが、この答えは、兎も角此の際、運命的なものだったと言っていい。