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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《五瓣の椿(ごべんのつばき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 頁
――死んだ、それはどこの娘だ。
本石町に「むさし屋」という薬種問屋がございますが、そこの一人娘で、名はおしのさんと云いました。
――むさし屋、むさし屋。
友達の二人は町内に住んでい、一人は死んだという。「むさし屋」という屋号になにか記憶があるようだったが、お倫を押えるほうが先だと思い、そのまま辻駕籠をひろって本郷へとばした。
だがお倫はもういなかった。隣りで聞くと、昨日の朝早く引越したという、「実家へ帰ることになった」と挨拶にまわったそうで、そのほかにゆき先を知っている者はなかった。
「勘のいい女だ、おそろしく勘がいい」と歩きながら彼は呟いた、「せめて香屋の伜をと思ったが、それさえ一と足違いで先を越された、ざまはないぞ」
彼は舌打ちをした。
――香屋の伜はやられるかもしれない。
無事に帰るかもしれないが、女が急に引越したのは危険を感じたからであろう。とすれば、つまり女が彼を覘っているとすれば、おそらく無事に帰るようなことはないだろうし、それを防ぐ方法もない。
「なにか手段があるか」と青木は自分に問いかけた、「一昨日の晩で懲りたうえに、これだけ勘のいい娘なら、おいそれと捉まるような場所を選ぶことはあるまい」