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よじげんひょうりゅう
四次元漂流
海野 十三
線上閱讀海野 十三《四次元漂流(よじげんひょうりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 63,363 字 · 128 頁
ところが彼の靴音はその椅子の方へはいかず、道夫の背後を忍び足で通りすぎた。やがて紫のカーテンの金具が小さく鳴った。足音はそれっきり聞えなくなった。怪紳士はこの暗室からでていってしまったのだった。ぞっとする寒気が再び道夫の背筋をおそった。
(僕ひとりをこの部屋において、どうしようというのだろう)
不安が入道雲のように膨張していった。動悸がはげしくうちだした。のどがしめつけられ、息がつまりそうである。道夫は一声わめいた上でこの部屋から逃げだしたい衝動にかられたが、なぜか足も腰もすくんでしまって自由がきかなかった。彼は催眠術をかけられた人のように、そのままじっとしているより外なかった。
五分、十分。……何事も起らない。部屋は完全なる暗黒である。五感に感ずるものは、ほのかなる香料の匂いと、そして大きくひびく道夫自身の心臓の音だけだった。
十五分……そして多分二十分も経た。道夫が椅子の上で身体をちょっと動かすと、ぎいっと椅子が鳴った。それはびっくりするほどの高い音をたてた。
三十分……もうたえられない。我慢ができない!
と、そのときだった。隣室の鳩時計がぽうっぽうっと、九時をうった。