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よせ
圓太郎馬車 正岡容寄席小説集
正岡 容
線上閱讀正岡 容《圓太郎馬車 正岡容寄席小説集(よせ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 147,226 字 · 295 頁
現に今、振り出しに行っているお成道の日本亭は、お艶ちゃんが一段新内を語り終えると必ず、
「大出来、大当たり」
と頓狂な賞め言葉を掛けてくるお客のいたところとして悲しく忘れられないし、三の輪の寄席の高座では、※(歌記号、1-3-28)縁でこそあれ末かけて……とあの人が「蘭蝶」を歌い出したらプッツリと糸が絶れ、俺が下座の小母さんの三味線をひったくるようにかかえて高座へ持ってってあげたところだっけ。
ところがどうしてだろう、その三味線の糸もまたすぐ絶れてしまったので、
「しかたがない」
こけた美しい頬へ寂しい笑いをのせてお艶ちゃんは、いつにもなく立ち上がり、自分の糸のほうのつながるのを待ってその三味線で下座さんに、※(歌記号、1-3-28)獅子はほんかいな――を弾いてもらって器用に踊った。これがかえって大受けだったっけ。
千住の薄暗い寄席の楽屋にも思い出はあるし、花川戸の西の宮って寄席の前へ来ると太い真紅な字で「富士松上るり、おなじみ富士松お艶」と書いてあった招き行燈が、今もマザマザ灯に揺れて見えるものを。
そのたび新しい悲しみにおそわれ、そのたびおそろしいほど胸の潰れた今松だった。