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よせ
圓太郎馬車 正岡容寄席小説集
正岡 容
線上閱讀正岡 容《圓太郎馬車 正岡容寄席小説集(よせ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 147,226 字 · 295 頁
初看板
一
花見客の群れ集う上野の山の賑わいがそっくりそのまま夜は、鈴本の寄席へ移されて毎晩毎晩、客止めだった。
少しうつむき加減で高座へ出てきて首を突き出し、
「また聞いたあの話、その晩の出来と不出来がお景物とやらで、梅に鶯、竹に虎、幽霊に柳、落語家に扇子、北風に濁酒、こりゃもうみんなつきものでげして」
富本でも歌えそうな江戸前の中音で、流れるように歌い出していく名調子には、スーッと胸の透くものがあった。
若いくせに本寸法で江戸前の渋さがあるうえに、芸全体の雰囲気はふッくらと軟らかく、師匠助六譲りのふき出すようなおかしい調子も備えていて、酔っ払った男が、
※(歌記号、1-3-28)なにがなにしてなにとやらア
とよろしく鼻唄を歌ったあと、なぜかことさらに一ッ調子張り上げて、
「ギュッ」
と卵を踏み潰したような音を立てるあたりなど、満座抱腹絶倒した。
しかも、ホロリとするところへくると充分にしみじみとした陰影をも漂わせ、「おせつ徳三郎」の心中場など、深川木場あたりの宵闇の景色の描写は、持ち前の歌い調子で広重描く江戸百景をさながらに美しくマザマザと見せてくれた。
本格でいて陽気。