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おおおかえちぜんのどくりつ
大岡越前の独立
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《大岡越前の独立(おおおかえちぜんのどくりつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,968 字 · 24 頁
と、越前の顔をみた。
「中々、天晴れな者で御座ります――」
「司政者として、得体の知れぬ者を、よし正真の証拠品があろうとも、御当家の為に――」
「いいや、正真の証拠品が有らば、得体は知れておりまする」
「得体がよし知れておっても、この間申した如く――」
「なれど、司政の根本は、物を正すに御座ります。正しきを正しきとし、曲れるを曲れるとし――」
「それは、よく存じておる。越前が、判官として、そう申すのは、重々、信祝も解せる。然し天一坊の事は、重大で、時としては、司政の都合にて、法を枉げる事も――」
「いいや、法を枉げてよい司政は御座りませぬ。正しき証拠のある者を、罪にする事は、司政の根本を覆す事で御座りまする。もし強ってとの仰せならば、越前に代って、南町奉行を余人に申しつけ下され度く、越前が、職におりまする限り、御老中の仰せ、公方様の仰せで御座りましょうとも、罪無き者を罰する事はできませぬ」
信祝は、不機嫌となって、唇を痙攣させていた。
「然し――未だ、紀州の調べも済まず、万事は、その上のことで御座りまするが、越前が職にある限り、法を方便には用いませぬ。このことが、もし庶民に判りました節は、天一坊を御城内へ入れましたことよりも、人心には危機が参りまする。