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おおおかえちぜんのどくりつ
大岡越前の独立
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《大岡越前の独立(おおおかえちぜんのどくりつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,968 字 · 24 頁
五
人民が、司政者に依頼するは、司政者が法を枉げず、法は司政者によって歪めないからで御座りまして、罪なき者を罰したとあっては、一国の法も、司政者の権威も、その時より地に墜ちまする。天下の人心が、御司配を頼まなくなりまするのと、天一坊が、ここへ入りまするのと、何れが重大か――」
「それは、判っておるがの。そっと処分して洩れなければ――」
「判官としての越前の良心が許しませぬ。判官に、法を守るの良心が無ければ、法が乱れ、法の乱れは、政治を乱す基で御座りまする。判官は、洩れなければよい、と申すような心掛では勤まりませぬ。壁にも耳、徳利にも口と、寸分、間違いのないことを、法に照らして処断するのが務に御座りまする」
「紀州へは、すぐ使を出すか?」
「取急ぎ打ち立たせまする」
「それでは、万事その上と致そう。いや――越前の――」
と、信祝は、朗らかに笑って
「そうなくてはならぬ」
と、幾度も頷いた。
「恐れ入りまする」
「世間で、評判のよいのも尤もだのう、とてもかなわぬわい、越前、あははは」
と、信祝は、便室一杯に笑った。
五
松平信祝からの火急の使者が来たので、紀州家附家老、安藤帯刀は、自慢の南紀重国の脇差と、蜜柑一籠とを、家来に持たせて、駕を急がせてきた。