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おおおかえちぜんのどくりつ

大岡越前の独立

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《大岡越前の独立(おおおかえちぜんのどくりつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,968 字 · 24 頁

青空文庫

「宇兵衛、これだが――」

と、一人の侍のもってきた包をあけると郡奉行は、菅笠を取出した。

「はい、はい」

と、庄屋は、両手を突いた。二人の侍の背後を、庄屋の女房が、両手を膝まで下げながら、おずおずと通ると

「早うせんかい、馬鹿が」

と、庄屋が叱った。

「見覚えがあるか」

宇兵衛は、首を傾けて、両手を膝へ置いてじっと菅笠を見ていると

「それ、宝沢と、そこに書いてあるの」

「はい」

「宝沢とは、誰の事か存じておるか」

「宝沢?」

と、宇兵衛は、首を傾けた。

「宝沢?――はてな、宝沢さん」

「感応院の小僧の宝沢を存じておるか」

「あっ」

と、宇兵衛は、右手を宙に上げると、笑顔になって

「あの、天一坊様」

「うむ」

「そうそう、あの方は、幼な名が宝沢、これは、あの天一坊様の」

「所で、あれが、とんだ贋者での」

「ええっ」

「江戸表から、取調べの役人がまいられて、この証拠の菅笠を御見付けになったが、それ――この黒い所は血じゃ」

宇兵衛は、頷いて、口を開けたままであった。

「宝沢を殺しておいて、御墨附と、短刀とを奪取って、まんまと、贋者め、天一坊に成りすましておるのじゃ」

「はあ――」

と、宇兵衛は、血の跡だという黒い斑点と破れた所とを眺めていた。