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おおおかえちぜんのどくりつ
大岡越前の独立
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《大岡越前の独立(おおおかえちぜんのどくりつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,968 字 · 24 頁
と、廊下で足音が止まると、障子の腰の所で、澄んだ声がした。信祝は、身体を起すと
「これへ」
と、いった。
「灯をもて」
と、去って行く足音へ声をかけると、炭火を掻き分けて、坐り直した。夜が、薄くかかってきた障子へ、灯の影が動いて、足音が近づくと
「阪井右京めに御座ります」
「戻ったか? 許す」
と、信祝は、微笑した。灯が、障子に近々と揺れると、右京の背後から、二人の腰元が、燭台を捧げて、入ってきた。その裾の下を右京は、二、三尺膝行すると、平伏して
「つつがなき御尊体を拝し――」
と、いいかけると、信祝は、手を振って
「挨拶はよい。ここへまいれ」
と、いうと、燭台を置いた女中へ、眼で、早く去るように合図をした。
「見苦しき装にて、御眼を汚しまする」
「正か? 贋か?」
と、両手を膝へ置いて、俯いている右京へ問いかけた。
「御落胤に相違御座りませぬ」
信祝は、右京の髷をじっと凝視めながら暫く黙っていた。
「越前から、誰か、調べにまいったような形跡はなかったか?」
「越前から?――と、仰せられますと」
「忠相じゃ」
「はっ、越前守からは、一向に、未だ、そのようの様子も見受けませぬ」