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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新・水滸伝(しん・すいこでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 頁

青空文庫

その間、チラと時遷の目が、彼の眸と怪しい交叉を交わしたが、考え込んでいた金鎗手の徐寧はもとよりそれに気づきもしない。

「ムム、それしか途はあるまいなあ!」

そこで時遷をしょッ曳いて、さらに街道の旅をつづけた。朝は早立ち、夜も暗くまで歩いて、数日なおも、東へ東へと。

すると、幾日目かの昼である。空樽を積んで街道を行く空馬車を先に見かけて、

「馬車屋のおッさん、どこへ行くのかね」

と、湯隆が追ッついて呼びかけた。

剽軽そうなおッさんである。馭者台から振向いて。

「おいよ、おれかね? あきないで鄭州へ行き、泰安州へ帰るところさ」

「そうかい。そいつアちょうどいい。――こう、連れの一人が、跛行を曳いて、弱ってるんだ。乗せてッてくんねえか」

「また空樽が三ツ殖えるわけかい。ま、乗んなよ。骨が折れるのは、わしではない、馬だからね」

「空樽扱いはひでえな」と、三人、さっそく空樽の間へ割り込んでそれへ乗り込み――「こう見えても、ふところは空じゃねえぜ。向うへ着いたら、駄賃はやるからな、おッさん」

「お礼は先に言っとくよ」

と、おッさんは、鞭を振り振り、口笛を鳴らし初めて、

「なるべく、たんまり酒代が出ますように、ひとつ、退屈しのぎに、ごきげんを伺いやしょうかね」