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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新・水滸伝(しん・すいこでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 頁

青空文庫

それがまた不気味に感じられ、任原の弟子たちはタジタジとした。「どうせ、相撲の当日には、分るこった」「まあ、今日は見のがしておけ」「覚えていろよ」などと口々に言いながら、ごそごそと、いちどに外へ出て行ってしまった。

「ふ、ふ、ふ」

「あははは」

そのあと、二人が手を打って、不敵に笑い合ったのを見て、宿の番頭は、胆をつぶしたように帳場の方へ素ッ飛んで行った。

翌朝燕青は、その番頭をつかまえて。

「任原は、どこに泊っているんですか」

「関取のお宿は、迎恩橋のそばで、門前町でもいちばんの大旅館ですが」

「その迎恩橋というのは」

「もっとずっと、お山に近い中腹なんで。へい、なんでもお弟子衆の二、三百人を、毎日に半日は、えいや、えいや、揉んでやっているということですよ」

「おもしろそうだな。ひとつ見物してくるかな」

「お連れの、黒いお方は?」

「あれは病人だからね、今日もふとんをかぶって留守番だ。そっと寝かしておいてください」

なるほど、迎恩橋まで来てみると、旅館は任の一行で貸切とみえ、旗、幟、牌、造花で縁どられた絵像の額など、たいへんな飾りたてである。

それに裏庭では今、さかんに稽古をつけているところとみえ、歓声、拍手、見物の笑い声など、人の出入りも自由と見えたので、燕青も大勢に紛れて中に立ちまじっていた。