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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新・水滸伝(しん・すいこでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 頁

青空文庫

高毬ほどな男とて、そのへんの挙止はさだめし心得ていたことだろう。王大将ノ宮から直々の試問をうけても、彼は、自己の才をすぐ喋々とひけらかすようなまねはしなかった。あくまで初心で謹直な好青年のごとく、初対面の貴人へ印象づけた。

「なるほど、小蘇学士の吹挙だけあって、この書生なら、当家の近習に加えても恥しくはないな」

王大将ノ宮は、高を一見されるや、すっかり気に入ってしまったらしい。侍臣の列をかえりみては、

「どうだな。おまえたちはどう思う。この男、なかなかよい人相をしているではないか」

などと品評したりして、即座に、お召抱えと、事はきまった。

こうして、市井の一放浪児にすぎない高毬は、はしなくも現天子の馬(天子の婿たる人の官名)王晋卿の館に仕える身とはなった。

まことに“犬も歩けば棒にあたる”みたいな幸運というほかはない。しかし、幸運に会しても、よくその幸運を生涯に活かしえない者はいくらもある。その点、彼は以後、水をえた魚のようなものだった。つつんでいた才気は徐々に鋭鋒をあらわし、その多芸な技能は、やがて王大将のおそばには、なくてならない寵臣の一名となっていた。