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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 頁

青空文庫

時。――はからずも、こんどの開戦だった。

小兵衛は、父の代のことがあるので、以来、前田領を憚って、佐々領に店をもち、家族の住居も、富山附近においていたが、ひそかに、御恩返しは、この時と、思っていた。

努めて、佐々家の近臣にちかづき、あらゆる忠義立てを見せ、そして、今度の道案内の役に、自然、小兵衛こそ適任――と、衆口をもって、いわせるほどの、下地を積んでいたのである。

(鳥越城の裏へ、不意に打って出る山越えの、道案内をいたせ――)

と命ぜられた時、彼は、これは亡き父親が、自分へいいつけたものだと思った。

かれは、一命と全財産を、賭けて出かけた。そして、まんまと、疑いぶかい佐々成政を信用させ、二万の兵を、ひきずり廻した。

――だが、佐々軍の行く方向には、前田方の末森城があることにふと気づいて、

「あ。これはなお一大事だ。いい気になってはいられない。一刻もはやくこのことを、金沢表へお知らせしなければ、仏作って魂入れずじゃ」

急に、立ち上がると、小兵衛は猿のように、加賀境の三国山を越え、河北潟の水を遠く見ながら駈け出した。

富山を出るとき、かれは早くも後難を察して、留守の家族に、店をたたんで避難せよといいつけておいたので、恐らく今頃は、かれの家族も雇人も、家財一切を船につんで、神通川から海へ脱し、他領へ逃げ去って