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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 頁
「空あいも悪いし、金沢からの疲労もあっては、おそらく、津幡に留まることは、確かであろう」
氏張も、同様な判断のもとに、その夜は、何ら備えもせず、川尻の陣に、ただ歩哨だけを、増しておいた。
ところが、その歩哨が、
「敵だッ」
と、自分の任務の重大に自分で気がついたときは、すぐ眼のさきの今浜のなぎさまで、利家の馬じるしが進んで立っていたし、大海川の浅瀬をわたる前田勢が、幾団にも、わかれわかれに続いて来るのが、見えていた。
中にも、今浜の海べに、利家の馬じるしを持って立った旗本たちの一団は、それを高々と振り上げ振りかざしては、はるかなる孤城の友へ、
「――来たぞ、来たぞっ。殿を初め、われらまで、はやここまで来ているぞ。頑張れ! 末森衆!」
声はとどくはずもないが、みな声かぎり叫ばずにいられなかった。
――と。声は聞えるわけもないが、末森城の内でも、遠く、今浜の方を見て、全城の者が、わあッと、喊呼をあげていたのである。大樹の上へ登っていた城兵の上原清兵衛なる者が、歓喜のあまり木の上から墜落したのも、この一瞬のことだった。
海づたいに、潜行していた前田方の先鋒は、いつも中軍の馬じるしよりも、はるか先へ先へと、進んでいた。