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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁

青空文庫

けれどそれは一部の将士だけに過ぎない。あらかたの者は、そこを占拠するや否、なだれを打って麓へ退いた明智勢を急追していた。そして途中から堀秀政の手ひとつになった。

秀政もこの時は、多くの味方を得たので、ためらいなく、さきに駈けた部下の一部を救うためにも、急きに急いて、追撃戦へ移っていた。

逃げ散る敵は道を選んでいないので、追う者また道を見てはいなかった。

このすさまじい「駈落し」のうちに、宮脇又兵衛(後に長門守)は馬を用いていた。そして宝寺のうしろの断崖の上に来てしまったのである。馬は当然、硬直してうごかない。その間に、身軽な敵勢は、小道を駈け下り、或いは、藤蔓などにすがって、蜘蛛の子のように逃げ降りてゆく。

「武門に伍して、日頃は人並の言を吐いている又兵衛も、いざとなっては、わずか数丈の切岸に怯んで、馬を捨てたといわるるも口惜しい。――源九郎がひよどり越えの嶮しさは知らねど、ままよ彼も人、我も人」

又兵衛は両の手に手綱を結んで、ひたと馬の背に胸を伏せると、逆落しに絶壁を乗り落した。

人に見せんためではないが、せつなの勇姿を目撃した者も多かった。敵とも味方ともつかず、ただ一つの喊声が、わあッと、その蹄から立った砂煙へ驚嘆を送った。