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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

飢饉、天変地災などが、代々にわたってあった程であることは、人、誰もいわず、誰も思わない。

いずれにしても、戦いは、地震の頻度ほどあった日本である。わけて戦国期の民は、その中に苦楽し、その下から新しい年々を創てていた。都でさえも、洛内隈なき地、兵火の灰より成っていない地層はほとんどなしといってよい。

桑名も、秀吉軍が迫る前に、疾く城内から領民へ、

「退く者は早く立ち退け」

と、布令られていたが、やはり多くは残ってしまったものらしい。可憐らしさ、不愍さ。しかもベソは掻かず、飽くまで生きんとし、生きんとし、奔り遁れる生命のたくましさ。甲冑の士の流す血しおとは、またべつな健気さがある。

およそ長い歴史を通じ、何が強靭かといって、民の不撓不屈ほど、驚歎されるものはない。

往時、浅間山が大噴火すると、麓の村々は、一夜にすがたを消し、地物はみな灰の下になったという。灰が土と化し、木が生え、畑ができ、村ができると、また大噴火があったという。

しかもいつかまた、村が創ち、町につづき、雛の節句には、草餅をつき、秋の月見には、新酒で蕎麦を喰べたという。

史上の、いかに烈しい戦乱といえ、それによる転変といえ、この民の力の大示に勝る力を見ず、この不撓不屈な業に比類するものもない。