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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁
馬上の佐久間玄蕃允は、途々、部署の将士へこう云いながら、幕僚数十騎、兵二千をつれて、まだ燃えているさかりに、山上へ登って行った。
やがて、勝鬨がとどろいた。
天辺に聞えた万雷のそれに応えて、ふもとの庭戸ノ浜や、尾野路山の間道や、その他、諸所の警備に分駐された味方の各部隊も、その居る所から、
「わあーっ。うわあっ」
勝ち誇る鬨の声をあげ、この朝の予想外な戦捷を天地に祝した。
時に、陽は巳の刻(午前十時)頃であった。
(この間に、腰兵糧を解き、休息あるべし)
という令が伝わる。令は、貝をもって知らされ、心得は、使番をもって、各隊の部将に達せられた。
即ち、いう。
(中入りの一挙は、首尾上々、味方の大勝に帰したとはいえ、なお賤ヶ嶽、岩崎山、堀秀政の東野山より堂木へわたる敵のうごきも定かでない。飯咬むあいだも油断あるな。――常に、山上の旗合図、のろし、或いは随時、貝をもって報ずる令に心せよ)
炎煙はやや鎮まった。
焼け跡近く本陣をおいた佐久間玄蕃允のまわりは、花見のようなざわめきだった。玄蕃允は大機嫌なのである。床几に倚って、次々に持って来る首級を視にかかった。