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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁
雲も夏めいて来た。新樹に初蝉の声もする。湖から湖へ渡る山上の風はわけて快い。空腹を満たした兵たちは、ようやく眠気ざし、槍や銃を抱いたまま、彼方此処に転がり始めた。
木蔭の馬も、瞼をふさぎ、部将たちも、木の根に倚って、居眠っていた。
「…………」
静かである。激戦のあとの一瞬ほど寂たる感を誘うものはない。つい夜明け前まで、敵が夢をむすんでいた営はすべて灰と化し、その人は悉く屍となって草むらに委されていた。昼ながら鬼気肌に迫る――。哨兵の姿のほかは、帷幕のうちまでひそとしていた――。雷の如しというほどでもないが、主将玄蕃允盛政の鼾声が、そこから、さも快げに洩れてくる。
――戛つと五、六騎がどこかで留まった。一群の甲冑はすぐこっちへ駈けて来た。玄蕃允をめぐって、各※(二の字点、1-2-22)、坐態のまま眠っていた幕僚たちは、くわっと、すぐ眼を外へ向けて、
「何かッ」
と、呶鳴った。
「松村友十郎、小林図書など、大物見の者どもにござりますっ」
「はいれっ」
そういったのは、玄蕃允だった。不意に起きて、大きくみはった眼はまだ寝足らないように赤かった。一睡に入る前に、嗜む酒を仰飲ったとみえ、座のかたわらに朱の大盃が乾いていた。