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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

今し、序戦の火ぶたが切られている蜂ヶ峰とは、反対な方角へ、秀吉の主力は降りて行ったのである。

その道を、斜めに降りて行くと、尾野路山を右に見、やがて余吾ノ湖の畔――庭戸ノ浜へ出る。

と――

坂の途中に、切れ草鞋、手拭、折れ矢、笠、馬糞などが踏みにじったように散乱していた。

「玄蕃の軍勢も、尾野路よりここを横切って、清水谷へ越え出たものとみゆる。――見よ、地に描いて行ったこの慌てぶりを」

秀吉が察した通り、佐久間本隊は、つい一刻(二時間)前に、ここを通過していた。

「急げ。夜明けまでには、追いつこう。逃ぐる敵との間も、はや遠くはない。もう一息ぞ、もう一息ぞ」

余吾ノ湖の水面は、こころもち明るくなって来たかと思われる。山坂の嶮隘にかかると、秀吉は馬を曳かせて、若者輩にも負けずに歩いた。

浜へ出た。

渚の水明りのみでなく、夜も白々と明けたのである。

「糧喰え、糧喰え」

軍奉行に触れさせて、秀吉も行糧を喰べた。けれど、烹炊の煙は一切あげなかった。昨夕、美濃街道を急行軍して来る途々、領民たちから給与された握り飯を、木の葉や、手拭包みから解いて、立ったまま、むしゃむしゃ頬張り始めたにすぎない。