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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁
故に、これをもって、後世の史筆は、玄蕃允を非難して、
(賤ヶ嶽、越軍の敗れは、一に豎子大事を誤るによる)
と、彼が、叔父勝家の言を用いず、敵地に切り据わった罪に敗因の一切を帰しているが、玄蕃允の才略が老巧の将とちがって、いわゆる“青い”ことは確かであるとしても、それらの論断もまた極めて小乗的な結果論でしかないことは、以下、勝家が当夜から翌日までの、総帥としての処置をみれば、おのずから分ってくることと思う。
前夜――
二十日の宵である。
勝家は、玄蕃允へ、六回もやった使者が、ついに全くの徒事と帰して、怏々として楽しまず、万事休す――とまで歎じていた。そして、
(ともあれ、一睡)
と、やがて悲痛なあきらめの下に、陣所の寺の一房で、みじか夜の眠りについたが、さて、眠り得べくもない。
こめかみのあたりの血管が、著しく太くなって、しきりに愚痴妄想をよぶ。耳が鳴る。
(途方もない男かな。この勝家に、腹切らす奴よ)
と、玄蕃允にたいして罵った自分のことばも、陣夢寂たる裡に、独り沸らせていると、その憤怒も、やがては誰へも向けようもなく、自業自得と、自己に思い返してみるしかない。