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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

(勝たねば死のみ)

と思いきめていたに違いないことは、屍山血河を現出した賤ヶ嶽の乱軍中も、終始、陣頭に立って、二十歳台、三十歳台の若者たちにも劣らず、

(額で敵の背を押せや)

と、声を嗄らしつづけていたあの元気さでも、充分に想像がつく。

勝てば、直ちに、明日からは、天下人ともいわれる約束をもつ彼が、もしこの間に毛ほどでも、明日以後の世や一身の栄えを思っていたら、決してこんな赤裸一挙の勝負を果し得るものではない。

閑話休題。

さてその秀吉の精力と迫敵心は、まだまだこんな所に駐まって、凱歌に酔っているものではなかった。

時に、二十一日の正午。

一応、全軍は、兵糧を取った。

顧みると、賤ヶ嶽で序戦に入ったのが今暁の午前四時。

あれから約八時間ぶっ通しの戦闘であったのである。が、兵糧がすむと、全軍はまたすぐ北進の命をうけていた。

柳ヶ瀬、椿坂、大黒谷と、蜿蜒の兵馬は蜀に入る魏を偲ばせた。

国境の橡ノ木峠にかかると、西に裏日本敦賀の海が早や望まれ、北方越前の山野は展けて馬蹄の下にあった。

すでに陽は傾き、春めく天地のものみな、虹色の暮色に燃えていた。

秀吉の顔にも茜が染められた。