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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

「――御無事に、お送り申し上げて、戻りました」

「そうか」

とのみであった。――感慨何を思うか、利家はなお黙然たる姿だった。

二十一日の府中城はこうして暮れかけていた。――時に、秀吉の羽柴軍はすでに橡ノ木峠の国境を続々越え、この府中と一路つながる板取、孫谷、落合などへ駸々と近づきつつあったことは、まだここには分っていなかった。

「父上、燭をお持ちしましょうか」

「いや、ここには要らぬ。――こよいは櫓におらねばならぬ。そちも大手の守りについて、しかと怠るな。とかく疲れておる将士じゃ。そちの弛みは皆の弛みなるぞ」

「はい……では」

「わしも櫓に立とう」

共に、そこを出た。その時であった。

櫓下の暗い歩廊で、

「阿呆っ、阿呆っ」

ふいに、井戸の底でするような声が、がんがん響いた。

「――いけない、いけない、離すものか。イヤ離さぬ。こんな所で、犬死しようとするような阿呆、まいちど、頭から叱られるがいい。……さあ叔父上の前へ来い」

必死の声をしぼっているようでもあり、またどこか剽きんな調子にも聞えないではない。

「……誰じゃ、あの叫びは」

利家がきき耳たてると、利長はすぐ答えた。