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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

「――ではまず、御内儀に会い申そう。御内儀は在るや」

と、そこから声をかけながら、早や台所の方へずかずかと歩き出していた。

利家は、おどろいた。

妻に会ってくれるなら、いまこれへ呼ぶから――という間もなかったし、台所へなど行ってはいけないともいえなかった。

で、あわてて子息利長へ、

「孫四郎、御案内に立て。はよう行け」

と秀吉のあとを追わせ、自身は書院から廊下を出て、妻へ知らすべく奥へ急いだ。

より以上、びっくりしたのは、本丸の大台所に働いていた台所役人や、庖丁人やお下の婢たちであったろう。

ふいに、のっそりと、柿色の陣羽織を着た――武者にしても小づくりな一将が「やあ」と土間の内へ入って来たと思うと、そこの大勢を見まわして、

「又左の御前はおられぬか。御内室はどこにおらるる」

と、馴々しげに喚くではないか。

ここには、誰も、彼を彼と知る者はない。――が、腰にたばさんでいる采や太刀づくりは誰の眼にもただの部将とは見えない。どうしても大将である。しかも味方の内では見たこともない大将だ。

「……?」

初めは、みな怪訝な顔をしていたが、金采装剣の威を見て、はっと、一斉に下に退った。