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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

これも、めでたい。御亭主の武運は、まず上首尾よ。御内儀、よろこばれい」

「……あ。ありがとうござりまする」

彼女は、ひれ伏した額の下で掌をあわせた。

ところへ、夫人を奥の方にさがし求めていた利家が、ようやくここに見えて、

「ここでは、端ぢかも端ぢか、余りにお粗末すぎる。ともあれ、どちらからでも、お草鞋をお解きあって、まずまず上へ――」

と、夫妻して、手もとらぬばかりすすめたが、秀吉は、依然“立ち寄りの客”の気がるさで、

「北ノ庄へ急ぐ途中、ゆるりとも致しかねる。だが、御意にあまえて、冷飯なと一膳たまわろうか」

「――おやすいことではあるが、それにしても、書院か数寄屋へでも、ちょっと、お上がりなされて……」

と、一家を挙げて、秀吉の小憩を乞うたが、彼は、

「他日もある。きょうは早速こそよけれじゃ、御内儀、所望は冷飯一膳、ただ手軽うたまわれ」

とのみ、草鞋を脱いで、寛ごうとするふうもない。

秀吉の気性は、好いも悪いも知りぬいている夫妻である。義務や恰好が価値を持つほど水臭い仲でも元々ない。

「はい。……ではざっと差上げましょう」

利家の夫人、いちど外した襷をかけ直して、自身、調理場の水瓶や俎板の前に立った。