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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁
大部は信州海野口から甲州を南下した。――奪るべし、と思うだけの領分を、遠慮なく線で地図面に引くような規模をもっての大侵攻であった。これは家康にとって絶好な出兵の名分である。が、彼の挙げ得た実力はわずかに八千。そのうち三千の先鋒は、諏訪以南、乙骨ヶ原までの七里のあいだに、よく北条勢の数万を牽制しつつ、やがて家康の後陣と合して、新府韮崎の地形に拠り、浅生ヶ原をはさんで対陣幾十日に及び、さしもの北条の大軍をして、動けば不利、窺うも隙なく、まったく立ち往生のほかなきものとしてしまった。
和議が起った。家康の待っていたものである。扱いは、北条美濃守氏規。これは家康が幼時、今川家に質子となっていた頃、共に質子として同家にいた幼な友達である。これ以上の口きき人はない。
「上州一円は、北条に渡され、甲信二国は徳川家に」
という折合いである。家康の意図は成っている。
家康は二女の徳姫を、氏直へ嫁る約束にも承諾した。和と婚と分領と、三項一約のもとに、相互、十二月中に軍を退くことになっていた。
越前から柴田勝家の使いが、荷駄行装に北国の雪をかぶって、遥々これへ着いたのは、十二月の十一日であった。