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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁
が、勝家は、かさねて、
「――いやいや、薄縁なこの勝家へ、御貞節はうれしく思うが、元々、三人の息女らも、浅井殿(長政)の遺子。また秀吉とても、主筋の御妹にあたらるる御許ら母子に、つれなかるべきはずもない。……そう致されよ、早々、お支度されよ」
と、促してやまず、
「新六郎、これへ」
と、座中の侍を呼び、意をふくませて、さらに、そのことをすすめたが、お市の方は、否とのみ、面を振って、どうしてもここを去らなかった。
「それまでのお志とあらば、無碍のお計らいも、却って如何でしょう。せめて、何も知らぬ姫君たちだけでも、お館の御意のように、御城外へ出し参らせては……」
と、衆臣のひとしくいうことばに、彼女もそれには同意の容子で、さらばと、膝に寝ていた末姫も揺り起し、にわかに、侍を添えて、城外へ送ることになった。
茶々は、母にすがって、
「嫌じゃ……。嫌じゃ……、母様と御一緒に……」
と、離るべくもない身もだえをなしたが、勝家に云い聞かされ、母に諭され、なお狂わしきまで歎いてやまぬ姿を、侍の新六郎に隔てられて、むりやりに外へ伴われて行ってしまった。
三人の息女たちの泣く声が、遠くに行くまで聞えた。