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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁
できないから尊い。故に、もしそういう一者が出れば、一世の日輪、民の師父だが)
武蔵守は、そうした反省と、留守中を嘱せられた領政とに顧みて、
(似たほどもやっていなかった)
と、正直に恥じた。
――膝ぐみでこう在る夜などめッたにない。燭は四更、衆臣もいず、内輪ばかり、寧子や老母の迷惑は察しられたが、彼は、以上の思いを吐いて、なお秀吉に問うた。
「最前。――難しいといえば難しい。やさしいといえばやさしい。政も戦も一定と仰せられ、さて、秀吉も人間、民と一者なり、と伺いましたが、その人間とは一体、見た通りのものが真性か。底の底にあると仰せの善美が真性か。いずれが慥と人間の本性なるものでありましょうか」
「きめてかかるが間違いの因じゃよ。――のう、姉婿」
秀吉も常になく真摯にいう。
「おたがい、身の姿は一つじゃが、心の相は一つでない。お許の性にも善あり悪あり、秀吉の性にも凡愚あり聡明あり。いわんや大衆。ただその惑濁の大海より真を汲み、美を飛沫せしむることに尽きるわさ」
「さ、それですが?」
「命こそじゃよ。命豊かな民でのうては、求めても汲めまい。また命豊かな者ほど、死も怖れぬ。