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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁
次に製粉器械としての石臼の普及であるが、是は石工の技芸進歩と、その数の増加の御蔭であった。以前は薬材・絵具や茶の類に限られ、僅かに上流の家だけに使用せられていた石の小さな挽臼が、どんな田舎でも手に入り、また目立て屋という職人まであるようになった。農家が各自の穀粉を挽くようになって、一旦起こりかけた粉屋という専門業が早く衰えてしまい、名残を粉屋の娘の民謡に留めている。
最後に今一つの大きな改良が、前に挙げた擂鉢・擂木であった。これもまた臼と杵との変化であることは、その各地の名称からでも察せられる。スリコギが摺る小杵であったごとく、メグリギ・マハシギ等のキもまた杵であった。在来の手杵と異なる点は、搗くかわりにまわすことで労力がはるかに軽くなった。陶器の内側に臼の目を立てて焼くなどは、国内でも発明し得たか知らぬが支那の方が古い。いわゆる鎖国時代にこういう事までを聞き伝えて、ただちに全国に普及させた無名氏の智能は敬服すべきである。擂鉢の世に行われるまでは、一切の柔かな食物はみな臼で搗いていた。味噌は擂鉢ができてからかも知れぬが、それ以前の食物であった豆のゴの汁、また多くのあえ物類は、すべて臼によるのほかは無かった。