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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁
この頃必要があって地方の言葉を集めて見るのに、火吹竹という名で知られている区域は必ずしもそう弘くなかった。まず九州は南部の各県でヒオコシ竹というのがこの物の普通の名であった。オコス・オコルは燠(オキ)という名詞から出たらしく、少なくとも火を燃すことには関係が無い。炭に火種を添えて火を熾んにすることは、炭の常用よりも後に始まった作業で、すなわちその時期に入ってから、始めてこの地方ではその効用を名にしているのである。佐賀・長崎の方面には、またフスリ竹という名もある。フスルは燻るという動詞の方言のようだから、この地方では焚付けのために、すでにこの竹を使っていたことはわかるが、名から想像するとまだ十分にその価値を発揮していなかったかとも見える。
それから東に進んで中国地方、近畿は一帯に火吹竹の領分だったはずであるが、大和の南の方などには別になおイキツギ竹という異名も行われている。いかにも火を吹くという事は骨の折れる仕事であった。女は髪をよごし煙を忍んで、折角吹付けていてもちょっと休むとむだになる。ところがこういう器械を使えば空気の補充が容易なのだから、つまりこの名称は経験から生まれたものである。