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もめんいぜんのこと

木綿以前の事

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁

青空文庫

その大盃が三つ組五つ組になっていたのは、つまりはその一々の同じ盃で、一座の人が順々に飲みまわすためで、三つ組の一巡が三献、それを三回くり返すのが三三九度で、もとは決して夫婦の盃には限っていなかった。大きな一座になると盃のまわってくるのを待っているのが容易なことではない。最初は順流れまたは御通しとも称して、正座から左右へ互いちがいに下って行き、後には登り盃とも上げ酌などとも謂って、末座の人を始めにして、上へ向かってまわるようにして変化を求めたが、いずれにしてもその大盃のくるまでの間、上戸は咽を鳴らし唾を呑んで、待遠しがっていたことは同じである。この一定数の巡盃が終ると、是でまず本式の酒盛りは完成したのであるが、弱い人ならそれで参ってしまうとともに、こんなことでは足りない人も中には居る。それらの酒豪連をも十分に酔わせるために、後にはいろいろの習慣が始まった。お肴と称して歌をうたい舞を舞わせ、または意外な引出物を贈ることを言明して、その昂奮によってもう一杯飲み乾させるなどということもあった。亭主方は勿論強いるのをもって款待の表示としておって、勧め方が下手だと客が不満を抱く。