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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁
いたらしく思われる。下総の結城を筆頭にして、ユフの産地を意味する地名は、国の東西に分布している。たとえば大分県の別府温泉の西に聳え立った由布岳は、『豊後風土記』の逸文にも、ユフの採取地である故にこの名が付いたと記している。今日の村の名または大字の名に、湯本・由ノ木等の非常に多いのも、以前はユフの採取地として保護していた山野が、後に麻の畠作が進むとともに不用になり、開いて普通の村落田園としたことを意味するので、近くは武蔵の一国だけにも、自分はその十数カ所を列挙することができる。しかも是が東北の方へ行くほど少なくなるのは、やはりまた気候の制限があって、夙くからフヂやマダやイラ草の類を、是に代用した結果ではないかと考える。
小山田与清は近代の博学であるが、その著『松屋筆記』の中には、武蔵南多摩郡の由木村の地名を解釈して、弓削氏の植民地であったかと謂っているのは、なお西国の山村に柚木・油谷・柚園等の地名が無数に有ることを気づかなかった誤りである。柚園の園はもとは屋敷附属の圃場のことだが、九州南部ではソンまたはソと謂って、単なる独立の山畠をもそう呼んでいる。