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もめんいぜんのこと

木綿以前の事

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁

青空文庫

日本などにも世道澆季を説く人は昔からあった。正法末世という歎きの声は、数百年間の文芸に繰返されている。『徒然草』の著者の見た京都は、すでに荒々しく下品な退化であった。『古今集』の序文にも「今の世の中、色につき、人の心花になりにけるより云々」と書いてある。『古語拾遺』の著者などはそれよりまたずっと昔において、既に平安京初期の文化を悪評しているのである。老人が静かに追憶の中に老い去ろうとする際に、殊に周囲の社会生活の変化が目につくというだけのことで、彼らの知っている昔は、取り返すことのできぬ大切なものである故にさらに美しく思われ、たった一つしか無いものである故に一段と貴重に考えられるということは同情してよいが、変らなかった世の中というものはかつて無く、新と旧とは常に対立して比較せられるのである。故に今頃またそんな例を陳列して見たところが、おかしくもないことは知れている。私は忙しい人間だから頼まれてもそういう話はしない。

我々が爰で語り且つ考えてみようとするのは、当世にいわゆる生活改善、すなわち生活方法の計画ある変更に、はたしてどのくらいまで新し味があり、またこの時代の尚古趣味、ないしはあらゆる改革に対して不安を抱こうとする階級の批判に拮抗して、はたしてどの程度にまで現代日本の文化を価値づけることができるか