輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 頁
疲れているのだ、気力が衰えているのだ、そう思いながら、甲斐は両手で顔をこすった。喜兵衛はすぐに来た。旅装ではなく、常着に袴をつけ、月代も髭も剃っていた。
「挨拶はいい」と甲斐は夜具の上に坐ったままで云った、「まず用件を聞こう」
「不首尾でございました」と云って、喜兵衛は頭を垂れた。
「そうか」と甲斐は頷いた。
「京では十二日滞在致し、毎日、院の別当へ懇願にかよったうえ、ようやく門院さまにおめどおりがかない、御書状を差上げたうえ、仰せつけのとおり、お願い申したのですが」喜兵衛はいっそう低く頭を垂れた、「――禁中ではさきごろから、御料(皇室予算)について幕府と交渉しているおりでもあり、かように機微な問題には触れたくない、との仰せでございました」
甲斐は口をひきむすび、ながいことしんと沈黙した。それは、事が不首尾に終ったことを残念に思うのではなく、事実をはっきりと、自分の胸にたたみこもうとするようにみえた。
「わかった、御苦労であった」とやがて甲斐は眼をあげて云った、「さぞ疲れたであろう、こちらへいつ着いた」
喜兵衛は初めて両手を突いた、「せっかく仰せつけられながらお役に立たず、まことに申し訳がございません」