輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 頁

青空文庫

おち鮎

うらやましい生きかただ、と甲斐は思った。

新八が眼をあげて云った、「塩沢どのが毒死されたそうですが」

「いや、そうではない」

「私は毒死とうかがいましたが」

「毒死ではない、食に中ったのだ」と甲斐は云った、「だがその話しはよそう、今宵はおまえたち二人の晩だ、陰気な話しはやめてたのしくやるがいい」

そして甲斐は立ちあがった。

「またおりがあったら会おう、御苦労であった」

おち鮎

秋八月の朝、まだ明けたばかりで、船岡の館は霧に包まれていた。

水を満たした手桶を脇に置き、手拭を持って、宇乃は立ったまま、慶月院が薙力を振るのを眺めていた。慶月院はもう七十歳になるが、おどろくほど壮健で、腰もしっかりしているし、動作もやわらかく、しかも敏捷であった。

――おじさまのお母さまらしい。

宇乃はそう思った。

甲斐の温厚さとはちがって、慶月院と呼ばれる津多女にはきついところがあった。情に負けないというよりも、非情だと思えるほど、屹としたものが感じられるのであった。

いまこの館には、津田家から嫁して来た、甲斐の妻の伊久がいるし、また松山から帯刀宗誠に輿入れをしたさわがいる。さわはもう四歳になるいしと、二歳になる采女という、二人の子を産んだし、まもなく三番めの子が生れようとしている。