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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 頁
――仰せのとおりでございます。
「そのほうが聞いて来たのだぞ」
――御意のとおりでございます。
「おれはこんど出府して以来、酒井侯とはまだいちども会う機会がなかった、しかし涌谷の訴訟が切迫しているいま、どうしてもいちど対面しなければならない、それは酒井侯にとっても必要であろうし、今日は会って都合の打合せがある筈だった」
――御意のとおりでございます。
「それで会わぬということがあるか、内膳、そのほう紛らわしい口をきいたのではないか」
――私は松平内記どのに会いました。
「酒井家の老職だな」
――私は内記どのに面識がございます、内記どのの次には、関主税どのとも会いました、もちろん、二人とも私の身分と用向きをよく承知しておられ、紛らわしいような点は少しもございませんでした。
「それでもなお、侯は会われなかったのか」
――関主税どのが申されますには。
「どうした、主税がなんと云った」
――関どのが申されますには、このたびの老中評定が決着するまでは、おめどおりはかなうまい、とのことでございました。
「それは間違いだ、それは酒井侯の意志ではない、それは間違っている、側近の者たちがなにか思い違えているのだ」