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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 頁
――頂戴つかまつります。
「なんの祝いかわかるか」
――おそれながら。
「東市正の奥がみごもったそうだ」
――これはまた。
「まだ三月めだという、このまえ流産したから安心はならぬが、医者はまったく順調だと申しているそうだ」
――それはなによりのお知らせ、家中一同にとりましても、これにまさるよろこびはございません。
「重ねろ、重ねろ」
――仙台で江戸の新妻隼人からの手紙を受取りました。
「なにかあったか」
――申上げるほどのことはございませんが、御用取次衆が増されました。
「聞こう」
――久世(大和守)侯から召されまして、蜂谷六左衛門と長沼善兵衛がまいりましたところ、これまでの取次衆は。
「島田出雲守であった」
――島田雲州どのお一人であったが、新たに大井新右衛門どのを加えられる、とのお沙汰がありましたそうで、津田玄蕃がただちに大井どのへ挨拶にまいった、とのおもむきにございます。
「大井新右衛門、覚えておこう」
――次に、柿崎六郎兵衛と申す者を御存じでございますか。
「柿崎、聞いたような名だな、柿崎」
――名は六郎兵衛、浪人者だとございました。
「うん、思いだした、わけがあってひところ手当を遣わしたことがある、只野内膳がいろいろしらべ、役に立たぬことがわかってよせつけぬようにしたと思うが、どうかしたか」